サンクトペテルブルクのパラドックス

表と裏が同じ確率で出る硬貨を、表が出るまで投げます。k回目に初めて表が出ると、賞金は2k−1ドゥカート。期待値は無限大です。二百人がこのゲームを繰り返す様子を見てみましょう。胴元の支払いに上限を設けると、ゲームの価値はどう変わるでしょうか。

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レッスン

理論 — サンクトペテルブルクのパラドックス

サンクトペテルブルクのゲームでは、表と裏が同じ確率で出る硬貨を、初めて表が出るまで投げます。それがk回目なら、プレイヤーは2k−1ドゥカートを受け取ります。k回目の項が期待値に加えるのは2−k · 2k−1 = ½なので、期待値は無限大です。支払いの上限がBドゥカートの胴元なら、受取額はmin(2k−1, B)となり、ゲームの価値はV(B) = (m + 1)/2 + B/2m+1です。ここでm = ⌊log2 B⌋。B = 2mなら、価値は1 + m/2になります。ベルヌーイの対数効用では、資産Wのプレイヤーが払ってよい参加料の上限は、Σ 2−k ln(W − x + 2k−1) = ln Wを満たすxです。

各記号の意味

B
胴元の支払いの上限(ドゥカート)
V(B)
その胴元でのゲームの期待値
W
参加前のプレイヤーの資産(ドゥカート)
x
対数効用に基づき、資産Wのプレイヤーが払ってよい参加料の上限

胴元の支払いに上限を設けると、無限大の価値は13ドゥカートに 🖖

クラメールの胴元を押してみましょう。初めて表が出るのがk回目なら、賞金は2k−1、その確率は2−kです。どの回も期待値に加える額は半ドゥカート。これを限りなく足せば無限大になります。下のグラフの上端にある破線が、その期待値を示しています。すべての項を支払える胴元はいません。<a href="/stat/gamblers-ruin">賭博者の破産</a>と同じく、ここでも相手の資金は有限です。ガブリエル・クラメールは1728年の手紙でこの点を指摘しました。ダニエル・ベルヌーイが引用したその手紙では、賞金は224 = 16,777,216ドゥカートを超えないと仮定しています。すると、最初の25回に対応する項はそれぞれ半ドゥカートを加え、それより長いゲームはすべて上限額を支払うので、合わせてさらに半ドゥカートを加えます。ゲームの価値は13ドゥカートです。胴元の資金が2mなら、価値は1 + m/2。資金を倍にするたびに半ドゥカート増え、1,000倍にしても増えるのは約5ドゥカートです。1713年にこの問題を出したニコラウス・ベルヌーイは、分別のある人なら誰でも、参加する権利を20ドゥカートで喜んで売るだろうとダニエルに伝えました。ゲームの価値を20にするには、胴元に238 = 274,877,906,944ドゥカートの資金が必要です。1兆ドゥカートあれば、価値は20.91になります。

何度繰り返しても、平均は落ち着かない 🖖

上限なし、65,536回を押してみましょう。細い線はそれぞれ、一人のプレイヤーの、その時点までの平均受取額です。期待値が有限なら、大数の法則によってこうした線は期待値に近づいていきます。ここでは期待値が無限大で、n回の平均も確率一で無限大に向かいます。ただし、その歩みはゆっくりです。全員の中央値は、点線の曲線を少し上回りながら上昇します。この曲線は、ゲーム回数と同額の資金を持つ胴元でのゲームの価値。回数が倍になるたびに半ドゥカート増え、65,536回で9に達します。今回の中央値は9.29で終わります。平均を押し上げるのは、まれに起こる長いゲームです。n回のうち一回でもn以上を受け取る確率は、1,024回で63.2%、65,536回でも63.2%。この確率はゼロではなく1 − 1/eに近づきます。どれほど長く続けても、一回のゲームだけで平均が1ドゥカート以上押し上げられる可能性が残るのです。倍賭け法では様子が逆になります。ほとんどの日は1単位を勝ち取って終わり、まれにすべてを失う日が平均を決めます。資金1,024の胴元を押してみましょう。胴元の資金が有限なら期待値は6ドゥカートで、全員の平均はそこに集まっていきます。一人の平均受取額の標準偏差は、厳密に計算すると0.15です。

資産Wのプレイヤーがつける値は、資金Wの胴元での価値に近い 🖖

ベルヌーイの1,000ドゥカートを押してみましょう。ダニエル・ベルヌーイの1738年の答えは、同じ額を得ても、その人にとっての効用の増加は、すでに持っている資産に反比例するというものでした。資産の効用を対数で表す考え方です。資産Wのプレイヤーが払ってよい参加料の上限は、参加後の資産の対数の期待値が参加前と等しくなる金額xです。資産が1,000ドゥカートなら、参加料は5.97。資金がちょうど1,000ドゥカートの胴元でのゲームの価値は5.98です。百万長者を押すと、10.94と10.95になります。1,000ドゥカートから1015まで、両者の差は0.03を超えません。賞金gがWに比べて小さいうちは、ln(1 + g/W)はg/Wに近く、賞金はほぼ額面どおりに評価されます。gがWを超えると対数の増え方は緩やかになり、長いゲームの寄与はごく小さくなります。プレイヤー自身の資産が、実質的な上限を決めるわけです。1,000未満では差が開きます。資産10のプレイヤーの参加料は2.88ですが、資金10の胴元での価値は2.63です。ベルヌーイ自身は、無料で参加できる場合の価値を、資産10の人には約3ドゥカート、資産100の人には約4、資産1,000の人には6と見積もりました。何も持たない人には、ちょうど2です。

全プロセスの詳細解説

  1. クラメールのもう一つの答え:上限を設けず、平方根で測る 4 ステップ

    クラメールは同じ1728年の手紙で、もう一つの考え方も試しました。賞金に上限は設けず、お金の効用を平方根で測るのです。金額を百万ドゥカート単位で表せば、40を得たときの満足度は10を得たときの倍になります。この考え方では、ゲームの価値は何ドゥカートでしょうか。まずクラメールの胴元を押して、最初の答えの値を確かめましょう。

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    1. 最初の答えは、上限を設けたゲームです。画面から読み取ると、

    2. 各賞金の効用を平方根で表します。第k項は2−k√(2k−1)。公比1/√2の等比級数なので、上限がなくても収束します。

    3. この満足度の期待値を平方根として持つ金額が、ゲームの確実性等価額です。

    4. 比較のため、何も持たない人が無料で参加するときの価値を、ベルヌーイの対数効用で求めると、

    解答

    胴元の支払いに上限がなくても、2.91ドゥカート、すなわち1/(6 − 4√2)です。クラメールはこの額を「3にも満たない、実にわずかな額だが、それでも世間一般の評価には13より近いと思う」と述べました。平方根で効用を測ると、長いゲームの寄与は等比数列のように小さくなります。上限を設ける方法では強制的に抑えていた寄与が、効用の測り方によって抑えられるのです。ベルヌーイの対数効用では、何も持たない人にとっての価値は2になります。

学習の道すじ

公平なゲームが招く破産

参考文献 (2)