レッスン
理論 — ド・ブロイ波長と物質波
運動する粒子には、ド・ブロイ波長と呼ばれる波長があります。λ = h/pで表され、pは粒子の運動量、hはプランク定数です。そのため粒子線も、間隔がλと同程度の回折格子に当たると、光と同じように回折します。質量m、運動エネルギーKの粒子では、運動量はpc = √(K² + 2K·mc²)です。Kが静止エネルギーmc²より十分小さければ、よく知られた式p = √(2mK)になります。電子や陽子を静止状態からVボルトの電圧で加速すると、K = eVです。
各記号の意味
λ- 粒子のド・ブロイ波長
h- プランク定数。厳密に6.62607015×10⁻³⁴ J·s
p- 粒子の運動量。pcは同じ量をエネルギーとして表したもの
K- 運動エネルギー。素電荷一個をVボルトで加速したときはK = eV
mc²- 静止エネルギー。電子では511.0 keV、陽子では938.3 MeV
d- ニッケルの(111)面にある原子列の間隔。0.2158 nm
φ- 入射線と一次回折線のなす角。sin φ = λ/dで求める
- 前提
- 粒子線に含まれる粒子は、すべて同じエネルギーをもつものとします。静止状態から加速された荷電粒子ではK = eVであり、エネルギーは結晶の外側で測ります。電子線はニッケル表面へ垂直に入射し、表面を間隔0.2158 nmの原子列からなる反射型回折格子として扱います。そのため寄与するのは最上層だけです。ニッケルの原子列間隔は、格子定数0.352387 nmから計算しています。ボールの質量は、野球ボールとほぼ同じ145 gとします。
- 成り立たない場合
- 金属の内部では、電子は結晶に引かれて外部にいたときより速く進むため、波長も短くなります。1928年、デイヴィソンとガーマーは、表面より下の結晶面に対する電子線がブラッグの法則に従わないと報告しました。カール・エッカートの示唆を受け、二人はその原因をこの屈折に求めました。ここで用いる表面原子列の式には影響しません。結晶による引力は表面に垂直な方向へ働き、表面に平行な運動量成分を変えないからです。この式は、電荷の有無を問わず、どの粒子にも成り立ちます。1930年には、イマヌエル・エスターマンとオットー・シュテルンがヘリウム原子と水素分子の粒子線をフッ化リチウム結晶に当て、その回折を観測しました。
全プロセスの詳細解説
-
同じ波長をもつ電子とX線 5 ステップ
銅のKα X線の波長は0.154184 nmで、ブラッグの法則による結晶測定に使われます。電子を同じ波長にするには何ボルトが必要でしょうか。その波長のX線光子一個がもつエネルギーはいくらでしょう。波長が長くなると、両者の比較はどう変わるでしょうか。まずデイヴィソン=ガーマーの54 Vを押してください。
-
54 Vでは、電子の波長が次のように表示されます。
-
mc²よりはるかに小さい領域ではλは1/√Vに比例するので、より短い波長に必要な電圧は、波長の比の二乗を使って求められます。
-
光子のエネルギーはhc/λです。ここでhc = 1239.84 eV·nmです。
-
光子のエネルギーは電子の127倍です。
-
低速の電子ではK = h²/(2mλ²)、光子ではエネルギーがhc/λです。両者の比は2mcλ/h、すなわち波長を電子のコンプトン波長h/mₑc = 2.4263 pmで割った値の二倍になります。
解答
電子を63.27 Vで加速すると、銅Kα線と同じ0.154184 nmになります。この波長の光子一個がもつエネルギーは8,041 eVで、電子の127.1倍です。この比は2λ/λCなので、波長に比例して大きくなります。結晶で重要になる長さの尺度では、質量をもつ粒子は、光よりずっと小さなエネルギーでその波長に達します。粒子が重いほど、必要な割合はさらに小さくなります。三つ目の設定にある中性子がその例です。比が1へ近づくのは、波長がλCよりはるかに短い領域に限られます。そのとき電子はきわめて高速で、エネルギーは光子と同じくpcで表されます。
-
学習の道すじ
量子力学:波としての物質
参考文献 (4)
- Davisson's own account of the experiment: a 54-volt beam aimed at the (111) face of a nickel crystal, how the work began as a study of electron scattering and became a test of de Broglie only in 1926, and the check of λ = h/p against λ = 12.25/√V Å for nineteen beams: C. J. Davisson, "The discovery of electron waves." Nobel Lecture, 13 December 1937.
- Diffraction is not special to electrons: Stern's account of sending helium atoms and hydrogen molecules at a lithium fluoride crystal, and checking de Broglie's formula to about 2%: O. Stern, "The method of molecular rays." Nobel Lecture, 12 December 1946.
- The 54 V, 50° peak itself, and its reading as Bragg reflection from planes inside the crystal: R. Nave, "Davisson-Germer Experiment." HyperPhysics, Department of Physics and Astronomy, Georgia State University.
- Neutrons from a reactor, slowed to thermal speeds and reflected by a crystal because of their wave nature, as the basis of neutron diffraction: The Royal Swedish Academy of Sciences, "The Nobel Prize in Physics 1994." Press release, 12 October 1994.